耳に響くは太平洋の潮騒、目に映るは大海原に浮かぶおぼろ月。
絹糸のような柔らかな肌触りで包んでくれる
由緒正しき湯に浸かり、幻想的な自然との一体感に
満たされるひととき。
時折火照った身を潮風で冷ましながら、ゆっくり自分と向き合おう。
この湯を愛した雨情の唄を口ずさみながら、新しい自分を感じる時が流れる。
漆黒の闇夜を照らす月の光のように、美しく優しい私でいたい―。
ここは昨日までの憂いを溶かし、
心を解き放し、癒しの時をくれる大事な場所なんだ。
清々しい空気の中、新緑の森を歩く。
手をかざして樹木の息遣いを感じ、
せせらぎに足を入れて感覚を研ぐ。
「花の名前を覚えるよりも、この花がここに咲く意味に想いを馳せてほしい」
ガイドさんのそんなことばに頷きながら、
川岸にふと目をやればそこに咲く小さな花の、
大きな命の存在に気がづき、心が温かくなる。
山も川も海もある北茨城の、源流から河口までをたどる自然体験。
非日常を味わうひとときの中で、
明日へのエナジーが充填されていく。
「ありがとうございました」のことばとやさしい微笑みが胸に染みる。
ここで過ごしたすべての瞬間に意味があり、それに導かれて訪れたかのような心の宿。
「帰る場所がある」というしあわせを感じつつ、旅の余韻にまた癒される。